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文学部・芸術の現在2008:感性と創造的グループプロセス考

Geijutu no Genzai 2008 | 2008年度(終了) | 
| education | group process | works |

2008年度、慶應義塾大学文学部で開講した講座。グループワークを主体とした通年の授業で、実際に教室内に存在する現象(受講者自身の感性とグループプロセス)そのものを題材にすることで、教室を「いま・ここ」での「学び合い」の場にしていくことを試みました。

「感性」と「グループプロセス」をテーマにした理由は、ひとつは、授業の題材を教室内にあるものに絞ることで、教室が知識の伝達空間ではなく、「いま・ここ」で起こることを味わえる場になるのではないか、ということ。もうひとつは、現代芸術における感覚やプロセスへの関心。メディアテクノロジーを活用したインタラクティヴアートは、造形的表現であるとともに、鑑賞者がその体験から誘発される感覚を味わう作品が多い。また、近年多く実施されているコラボレーション型のアートは、作家の特権的な表現よりも、様々な一般の人々との関係性を主題化しています。こうしたアートの本質を見極めるためには、従来の美術批評の方法論ではない、「いま・ここ」の感覚や、人々の関係性の変容に鋭敏な感性が必要になるのではないか、と考えたからです。

授業では、「しょうぎ作曲」や「ブライド・ウォーク」など、グループの共同制作や自身の感覚を吟味するワークショップを重ね、秋学期には、各グループがユニークな発表を行いました(詳細は、授業で実施したプログラム一覧を参照ください)。

25人前後の小さなクラスでしたが、回を追うごとにグループの成長が感じられ、非常に頼もしく、また楽しい授業でした。体系的な知識の習得とは違うアプローチで、それぞれが関心を深め、異なる個性が真摯に語り合うことで達成できる学びがあるということを実感できました。学生それぞれが、大学での学びを自分ごととして充実させていくためにも、コミュニケーションの根元を見つめるこうした授業が、たまには必要なのでは、とも思います。機会があれば、こうした授業にこれからもチャレンジしたいと思っています。

以下、参考データです。

・授業で実施したプログラム一覧 [ →text ]
・最終回の講義で行った振り返りセッションの逐語記録 [ →text | →sound ]

本講義を題材にした論文(「『とまどい』の解消とクラスの成長——ワークショップ型の授業に関する一考察:2008年度『芸術の現在』を事例に」、『慶應義塾大学日吉紀要人文科学』)では、上記の振り返りセッションの記録を参照しています。逐語記録については、音源を聴きながらテキストデータを読むと、クラスの雰囲気がよく伝わってくると思います。