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芝の家:大学-地域連携のコミュニティ形成

Shiba no IE Community House | 2008〜 | 
| projects | research | scape design | shiba no ie | works |

「芝の家」は、港区芝地区総合支所によるコミュニティ・デヴェロップメント事業「昭和の地域力再発見事業」の拠点。企画と運営を、慶應義塾大学との連携で進めています。

→芝の家ウェブサイト
日々の出来事については、こちらをご覧ください。→芝の家ブログ「ちゃぶ台日誌」

オープンは、2008年10月。現在は、月〜土曜日の週6日間開室しています。月・火・木曜日は「コミュニティ喫茶月火木」と称して、お年寄りや近隣の会社員までゆっくりくつろいだり語り合ったりできる、セルフサービスの喫茶コーナーを開放。水・金・土曜日は、主に小学生向けの遊び場として、毎日にぎやかな場になっています。


以下、「芝の家」の説明。

子どもたちの成長を地域で見守り、井戸端会議では住民同士の親しい会話がある・・・そんな昭和30年代にあったようなあたたかい人と人とのつながりの創生をめざす事業が、港区芝地区総合支所の進める「昭和の地域力再発見事業」です。
「あたたかい人と人とのつながり」とは、子どもがのびのびと遊び、お年寄りが安心して暮らせるように、まちに住み働く人たちがお互いに支えあえる関係。本事業の拠点である「芝の家」は、現代社会で見失いがちな、こうした暮らしのあたたかさを育んでいくため、子ども、大人、お年寄り、住民、在勤・在学者、だれでも自由に出入りでき、みなさまと共にまちを考え創ることのできる場を提供します。
運営は、慶應義塾大学との協働で行われ、大学と地域が連携しながら、コミュニティ再生のアイデアをふくらませていきます。


「芝の家」の内外観。


坂倉は「芝の家」に「研究室」を構え、日々スタッフとともに「場」づくりを行っています(※)。そのなかで思うことを少し。

※2011年春より、デスクを大学に戻しました。いまは現場のお当番さんを中心に場づくりが行われています。

コミュニティづくりは、「ひとりひとりの人間を大切にする現場づくり」だな、と思う。訪れた人が安心して語り、出会った人を受け入れられるような「場」では、その人が大切に扱ってもらえているという実感がまず必要だ。その実感を生むのは、建物の形でもなく、事業目的やサービスの種類でもない。その「場」をつくっている人––「芝の家」では、学生や卒業生、近隣にお住まいの方々を中心にしたスタッフ––が、醸し出す雰囲気だといってよい。スタッフ同士が互いに信頼しあっていること、ひとりひとりがその場にいることを主体的に選択し、役割ではなく「本人」としていられること。こうした「場」の足腰がしっかりしてくると、自然に人は寛容な関わり方ができるようになる。

逆から考えてみると、コミュニティは、誰かが一方的につくるものではない。地域に住まい働く人ひとりひとりが、少しずつ、他者とのコミュニケーションの質を変化させていくことによってしか生じない。とすれば、「芝の家」にできることは自ずから限られてくる。まずは、私自信を含めて、スタッフそれぞれが自分自身を大切にし、共に働く人たちを尊重する。そしてその率直で寛容な雰囲気が、「芝の家」という「場」を通じて、何らかの形で地域的な波及を広がっていく。

こうしたアプローチは、計画的に遂行される事業とはずいぶん印象を異にするとは思うが、これを「コミュニティづくりのパーソンセンタード(人間中心)アプローチ」といえば、少しは伝わるだろうか。いずれにしても、いまはこの「人間を中心に据えた場づくり」の過程を、楽しんでいます。

論文など

坂倉杏介「地域の居場所からのコミュニティづくり──芝の家の『中間的』で『小さい』グループ生成を事例に──」『慶應義塾大学日吉紀要 社会科学』第21号、慶應義塾大学、63-78頁、2011年。

坂倉杏介、保井俊之、白坂成功、前野隆司「『共同行為における自己実現の段階モデル』による『地域の居場所』の来場者の行動分析:東京都港区「芝の家」を事例に」『地域活性研究』Vol.4、23-30頁、2012年。

坂倉杏介「地域の居場所の成立過程に関する一考察 港区『芝の家』の取り組みを事例に」『地域福祉実践研究』第4号、55-70頁、2013年。