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L.O.B. Floating Emergency Platform

L.O.B. フローティング・エマージェンシー・プラットフォーム | 2007 | 
| BOAT PEOPLE Association | scape design | works |

横浜トリエンナーレ2005に出展した13号艀(はしけ)を、水上の災害支援プラットフォームに改装。自律分散型の防災拠点船のコンセプトモデルとして、内閣府・都市再生プロジェクト推進事業の助成を受けて制作。2007年2月から3月にかけて、大井競馬場桟橋で一般公開しました。

この船は、陸上の巨大なライフラインと交通システムが一時的な機能停止に陥った際、短期的に電力や食料などのファーストエイドを行うとともに、帰宅困難者の水上輸送や情報拠点となる、水辺のエマージェンシー・プラットフォーム。太陽光、廃油を利用したバイオディーゼルの2系統の発電ユニットと仮設トイレユニット、水・食料などの備蓄スペースを搭載した水上に浮かぶ小規模自律分散型エネルギーシステムです。

また、この提案は、東京湾内に多数残る艀を、新しい形の「防災船」へ転用する、艀のリユース・プロジェクトの一環でもあります。

→Floating Emergency Platformウェブサイト

プロデュースは、井出玄一(BPA/地域交流センター)。設計・施工は、岩本唯史(BPA/アトテーブル)が担当。設計と設備は、下のサイトに詳しい紹介があります。
→アトテーブルのウェブサイトでの紹介

2007年2月23日から3月21日までの公開期間中に行われたイベントなど。

サバイバル・オン・ボード
一般公開の期間中、BOAT PEOPLE Associationメンバーとともに約1週間、船上で仮想のサバイバルを実行。

Pol Malo “Our Sweet Soul Reinventing the World after a Big Shock” 展
美術家・Pol Maloによる展覧会。災害発生後の物質的なサポートではなく、「文化的ファーストエイド」、「エマージェンシー・ミュージアム」をコンセプトとしたインスタレーション。

BOAT TALK:西野達×BOAT PEOPLE Association
 美術家・西野達さんとのトークショー。

それ以降の、Floating Emergency Platformの活動。

「地震EXPO」出展
「地震EXPO」の開催にあわせ、BankART Studio NYKに係留・展示

Emergency Performance / Dairy Performance
2007年5月26日、水上空間でのコンテンポラリー・ダンスの実験的公演。
詳細は、→Emergency Performance / Dairy Performance を。

コンセプトについて、もう少し。

例えば、東京を大規模な直下型地震が襲った場合。鉄道や道路網は寸断され、昼夜間人口の差の大きい首都圏では、650万人もの帰宅困難者が発生すると予測されている。無論、電気や水道などのライフラインもダメージは少なくないだろう。一時的とはいえ、都市機能は麻痺し、多くの人々が情報と移動の足を奪われることになります。

L.O.B. Floating Emergency Platformは、災害発生時のファーストエイドを提供する、小さな防災拠点の提案。そのコンセプトは、小規模自律分散型、非常/日常の機能的統合、水上輸送ネットワーク。

船は、いったん陸地を離れると外部からのエネルギーを得られない、自律循環型のシステム。もともと都市インフラとは切り離されているということ。この特徴をそのまま発展させ、太陽光や風力など自然エネルギーを用いた電力供給源と食料や水などを備蓄した船を、東京湾に多数浮かべる。仮に陸上の大規模ライフラインが寸断されたとしても、それぞれの船は影響を受ける可能性は低い。シミュレーション精度を上げトップダウンで行う災害対策とは逆の、多様性を高めることによって危機を回避する思想です。

さらに、こうしたシェルターは、災害後に引っ張りだしてきても意味が無い。つまり、平常時、災害発生時、復興期を通じて使用されることが重要。そのため、平時は水上の防災カフェとして運用ができるように設計している。

水辺に防災カフェがあることで、災害時の水上輸送の可能性も広がる。阪神淡路大震災の際も、多くの被災者や支援スタッフを船舶が運んだ。首都圏の帰宅困難者対策の有力策のひとつに、被害を受けにくい水路を活用した輸送がある。Floating Emergency Platformは、こうした災害時の水上交通の拠点としても適していると考えられます。

大規模インフラに依存せず、平時から地域コミュニティレベルで管理運用可能で、水上交通のネットワークのハブとしても機能するユニット。これを、艀のリ・ユースによって低いコストで整備していくというのが、ここでの提案。「水上防災カフェ」と聞くと荒唐無稽な響きを感じる方もいらしゃるかもしれませんが、本当に役に立つ可能性は、かなり高いはず。