triennale

横浜トリエンナーレ2005

YOKOHAMA 2005: International Triennale of Contemporary Art | 2005/09/18〜12/28 | 
| BOAT PEOPLE Association | scape design | works |

横浜・山下埠頭で開催された横浜トリエンナーレ2005に出展した、艀(はしけ)を改装した水上空間。建物でも船でもない、屋外でも屋内でもない、作品のような会場のような、曖昧な場所。作品名は、「Life on Board II 13号計画」。

水面に浮かぶ空間だから、当然、揺れる。足場が不安定になると、確固たる制度や思考の枠組みが揺さぶられるように感じる。どこか認識の基盤を失って行くような感覚。水上空間の、そうした身体的に働きかける力を取り出せるような空間を目指して制作した作品です。

遠くに揺れるマリンタワーやダニエル・ビュレンの旗を船内から眺める時間は、どこかが日常から乖離したような心地よさがありました。

会期中は、ライブやシンポジウムなども開催。詳細は、イベントプログラムを。

この後、トリエンナーレを期に購入した13号艀を起点に、BPAは活動を続けるようになります。防災拠点船というコンセプトで提案するFloating Emergency Platformは、この発展形。


(最後の2枚を除いて、撮影は、淺川敏さん。またこのページトップの写真は、亀村文彦さん)

以下は、横浜トリエンナーレ2005に寄せたコンセプト文。

 Life on Board-13号計画は、退役後の艀(はしけ)を人の集う空間に転用し、山下埠頭を起点に今後数年にわたって東京湾内の各地を漂流していこうとするプロジェクトである。

 かつては水上輸送の要であった艀は、コンテナ船が主流となった現在、岸壁につながれるままに放置されたものも多く、沈船や不法係留が問題になる場合さえある。我々の豊かで快適な生活環境を陰で支えてきた艀は、急速な経済成長の基盤を担い、ある場合はその軋みを吸収してきた、まさに近代化の遺産であるといえる。本プロジェクトで使用する艀は、尾竹型と呼ばれるもので、積載量90t、全長21m、船倉面積70平方メートル。東京・潮見で約30年間ゴミ運搬用として使われ、現在は廃棄処分を待っている。

 我々は、これをまず横浜トリエンナーレ会場となる山下埠頭に係留し、ミニマムな居住スペース兼水上のラウンジとして改修する。それは作品であると同時に会場の一部としても機能し、イベント会場、休憩所、簡易宿泊所、ミーティングプレイスなどとして利用される。また3ヶ月間の会期中、横浜港内への航海や別ポイントでの短期間の係留の可能性を探り、交渉が成立すればこれを実施する。

 水際に張り巡らされたフェンスが象徴するように、日本の都市部では、水面は公共空間として認識されていないばかりか、垂直的に管理され利用を制限された空間と考えられている。このプロジェクトは、単に艀を改装するだけでなく、各地での係留交渉とそれを受け入れる土地の人々のリアクションの間で、公共性に対する常識や日常では覆い隠されている様々な制度、歴史、感情を浮き彫りにする。そして同時に停泊先の人々が潜在的に持つ微かな願望の文脈に沿って、水上のコモンハウス、カフェ、ホテル、会議室などとして様々に使われていく。

 この艀は、陸上のあらゆる空間に比して不完全で不安定な空間である。人の集うことのできる空間ではあるが、建築ではなく、また完全な船でもない。海のうねりで絶えず揺らぎ、地球をとりまく天体の重力がそのグランドレベル=潮位を上下させる。安定した陸上の生活から移動してくる人々は、水上で起きるコミュニケーションに僅かなずれと、そこから眺め直す都市生活に別のアングルを発見することになるだろう。この艀は、陸地に寄生しつつ都市生活にこれまでにない別のバランスをもたらす、ひとつの触媒、物語、予測できないサーベイである。