見つめる鍋は煮えない。

by SAKAKURA kyosuke | 2009/ 10/ 3 | Posted in etc,notes | 

9月末は僕にしては珍しく、いろいろな〆切に追われてたいへんだった。論文の最終稿、本の原稿、映像、グラフィックデザインなどなど。

授業の準備もままならなくて、秋から始まるセミナーは(苦肉の策として)、外山滋比古さんの『思考の整理学』を教科書にすることにした。あらためて目を通してみて、自分の思考や発想を徹底して外部化する姿勢に、感銘を受ける。自分の思考の他者化といったらよいか。思いついた発想を「寝かせ」、「発酵させる」。そんな方法のヒントがたくさん。

初読ではない。でも、前に読んだときには、「ノートのつくり方」とか、そういうテクニカルな点に目がいっていたような気がする。いまは、その方法論が立脚しているところにある、「思考は自律的に育つもの」という突き放した態度(自分に対する自信でもあると思うけれども)のほうに、心が動かされる。思考も、アイデアも、おそらくは意欲だって、感覚的には「向こう」からやってきてくれるもの。いかに「やってくる」状態をつくるか、そしてそれをうまく育てるか。それらは力んでひねり出すものではない。達人になればなるほど、いかに身体と頭の力を抜いて憑衣体質をつくるかが、大切だと感じられるようになるのだろう。そうなんだよなあ。

9月末は〆切がたくさんあって、と書いたが、9割がたはちゃんとおさめたものの、実はこぼれている仕事もあってですね。いまそれに取り組んでいる訳なんですが。はやくやってこないかなあ、この原稿のアイデア。と待っているうちに今日も日が暮れるわけで。「見つめるナベは煮えない」、わけで。こまったものです。