Canal Curuising Map
流域や海岸線をベースにした地図は、実は意外に少ない。あったとしても観光ガイドマップのような物がほとんど。とくに都心部では、人の心理的な地図は陸上の交通ーー鉄道や道路などーーを元に近い遠いを感じていることが多いため、水の側から地形を見直してみると、船で行くと近い場所とか、水路によってつながっている複数の地点とか、あるいはそこに歴史の跡が見えてきたり、いろいろ新鮮な発見があります。
Canal Curuising Mapは、水上からの視点で、私たちの生活圏を見直す地図です。
2004年に、品川区・港区版を、2005年に、中央区・千代田区版を制作。それぞれ、しながわ観光協会、東京都観光局の仕事。
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東京の水辺のソフトウェア開発は、いま、まさに黎明期にあると思う。開港以来、産業の基盤としての利用が進み、時にウォーターフロントという名でマンションや商業空間が建設されたが、そうしたハード整備以外に、人間的スケールでの「使い方」が問題になってきたのはここ最近のこと。
Canal Cruising Mapをつくって感じるのは、水辺に意識を向け、草の根的に何かを変えていこうと考えている人の多さだ。地図を前に話をしていると、次から次へ、体験談やトリビア的な豆知識がつきない。同時に、想いや熱意がひしひしと伝わって来る。そういう会話が楽しくてつくってるような面もある。
おもしろいのは、いわゆる「反対派」の人たちも、個々の議題における主義主張は違おうが、地図の前で、水辺や運河のことを話す話ぶりは、「推進派」の人とほとんど変わらないということ。むしろ、愛情や知識の面では、代々水辺の仕事を生業としてきた方々の経験には我々の及びもつかない深さがあり、背筋ののびる気持ちになることも。
こうした経験を重ねると、これは、地図フォーマットに載った情報というよりも、コミュニケーションのフォーマットとしての地図なんだ、と思う。自分の地図観ががらりと変わった仕事のひとつ。
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Canal Curuising Mapは、品川版、中央版とも、残部数希少ですが、お求めいただけます。
→BOAT PEOPLE Associationウェブサイト